斎藤美奈子『趣味は読書。』(平凡社)

ベストセラー本と聞くと読みたい・読んでみようかしらと思う読者と歯牙(しが)にもかけない読書家に区分できそうである。後者でも話題になっている・売れているのだから、少しはどのような内容の本なのか知っておきたいと思うこともあるだろう。そのようなベストセラー嫌いの読書家に実はこのような内容の本ですよと指南してくれるのが本書だ。つまり「読書代行業」を著者に委ねるのである。

換言すると美奈子先生にベストセラー本を読んでもらって本の粗筋や勘所を教えてもらう訳である。でもヨイショするのではなく、切れ味の鋭いナタでバッサバッサと裁断される。この切口が面白いのだ。『朗読者』は包茎文学と斬り捨てる。『鉄道員(ぽっぽや)』は怪談物語だと喝破する。

波長が合えば痛快この上なく面白く読める。くすぐられる箇所が随所に挟まれているので何度もクスッと笑いながら読み進めた。読者を笑わせるツボを押さえているのである。書評以外にも読者層を探っているのも本書の特色だ。一体誰が買っているのだろうという分析である。『金持ち父さん 貧乏父さん』では「まあ金持ちになる方法を本で学ぶような人は、一生あくせく働きつづける勤勉な「ネズミ体質」の証拠」といった具合である。

本書は平凡社のPR誌「月刊百科」に7〜10年ほど前に連載されたものを収録している。ここ最近刊行されたベストセラーは含まれていない。大抵の書名は見たり聞いていて何となく覚えていた。でも実際に購入したのは、古本市の均一台で売られていた『日本語練習帳』だけだった。100円だったので、まあ暇な時にでもと思って買っておいたのである。後日、読み始めてからは直ぐにつまずいた。美奈子先生曰く、同書は「ぼけ防止」の為の「クイズ本」だそうだ。

それ以外の本は、本屋さんで手にしたことはあってもわざわざ買う気にならなかった。本書を一読し終わって、この本に収録されているベストセラー本は読まなくてよかったと思っている。時間と労力の無駄でしかなさそうなのだ。これから読むのなら著者による別の書評集しかあるまい。

趣味は読書。

趣味は読書。