大崎梢『プリティが多すぎる』(文藝春秋)

念願かなって名門といわれる老舗出版社に入社した主人公は三年目に週刊誌からピピン編集部に異動となった。月刊誌ピピンは女子中学生向けの雑誌であり、本人の希望する文芸部門とは大きく懸け離れていたのである。

誌面を飾るピピモと呼ばれるモデルは中学一年生から高校一年生までの女の子がなり、主にオーディションによって選考される。それ以外にもモデル事務所からの推薦や抜擢などもある。

モデルとなってからもアンケート調査により人気度のランキングがデータとして集計され上位の者は頻繁に紙面に登場し下位の者は掲載されることも少なくなる。かなりシビアな世界なのだ。それでも人気ランキング下位であっても、テレビドラマのオーディションに合格して子役から女優へのステップを進める者もいる。

喜怒哀楽の伴うモデル同士の交流を軸に、撮影現場、オーディションの選考過程、さらに広告料を支払っているクライアント・広告代理店の問題を絡ませて、雑誌の企画から発売まで要所を押さえた描写がされている。意に沿わない部署に配属された主人公の心の動きも同時進行していく。

主人公以外の編集者、カメラマン、スタイリストなど雑誌に関わるスタッフはみな真摯に取り組んでいる。なぜなら「ピピン」が好きだからだ。好きな対象に全力でぶつかっている姿を通して前向きに頑張らなくちゃと思わせるお仕事小説である。

プリティが多すぎる

プリティが多すぎる