林總『会社の「ウソの数字」にダマされるな! 粉飾決算編』(日経BP社)

会社を舞台として経理の内幕を描いたり公認会計士が登場する小説は昨今多く刊行されてきました。有名な小説では山田真哉氏の『女子大生会計士の事件簿』シリーズを挙げることができます。最初は面白そうと思って読んでいましたが巻を重ねるにつれて薄っぺらい内容となっていきました。小説のテーマも会計がメインというよりも恋愛小説の趣となって進んでいきます。

本書は希薄化された女子大生会計士シリーズとは異なって会計を軸に話が進行しますし人間関係の描写も読ませるだけの力量があります。「読む管理会計」と副題がついていますが、通常の原価計算を基礎にした管理会計を想定していれば肩すかしを食らいます。むしろ「読む会計監査」とした方が納得がいきます。会計に精通した優秀なMBA取得者と公認会計士が不正を暴いていく過程が面白いです。

会計の不正行為許すまじと正義感を一本貫くだけでなく大団円では人情味あふれる見方も示されています。このところ実務に関する小説仕立ての本を読んでいるのですが久々に次の頁を繰るのが楽しみな本と出会えました。会計監査入門書として読んでも面白い一冊です。


会社の「ウソの数字」にダマされるな! 粉飾決算編


読む管理会計 粉飾決算編 会社の「ウソの数字」にダマされるな!