やれやれと書いた理由

http://www.hatena.ne.jp/1130858345

こちらのいわしに、私は「やれやれ」と書き込みしました。質問者さんから、どのへんがそのように思われるのかと問われました。いわしに掲載しますと、設定により他の回答者さん宛にメールが届けられることになりますし、ちょっと長文になりましたので、こちらの方に上げることにしました。ご意見がありましたらコメントなりダイアリーでお願いします。

民法では、13種類の契約を規定しています。たとえば、売買契約、賃貸借契約、雇用契約、委任契約などです。雇用(民法623条)は当事者の一方が相手方に対して「労働に従事する」ことを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずると規定されています。

民法では以下631条まで雇用に関する規定がなされています。でも現実問題として、民法だけでは労働者の保護に十分ではありません。労働者の保護を目的として特別法があります。それが労働基準法ですし労働法と呼ばれています。

一般法である民法の特別法にあたるので、民法の規定より優先適用される。

 また、労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、労働者の保護を図る目的で制定され、この最低基準を守らせるために、取締法としての性格と強行法規としての性格をもっている。このため労働基準法に違反すると罰則が適用される。
http://www.onsya.jp/keyword/keyword81.html

ここで7番目の回答を転載します。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
http://www.hatena.ne.jp/1130858345#a7

前段は、労働基準法第15条第1項による労働条件の明示を記述しています。
再掲しておきましょう。

(労働条件の明示)
第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html#1000000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

これに違反(即ち労基法違反)に対応するにはどうすれば宜しいのでしょうか。
労働基準法 第120条第1項に罰則が規定されています。

第百二十条  次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一  第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html#1000000000013000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

上記のように第15条第1項に該当し罰則が設けられています。

また、労働基準監督署に申告することにより是正勧告してもらえます。
> 「是正勧告」とは、労働基準法労働安全衛生法に定められた基準について、企業の違反を発見し、それを是正させるためのものであります。

http://zesei-kankoku.hp.infoseek.co.jp/
>「労働契約の明示」に関して是正勧告される根拠とポイント
http://zesei-kankoku.hp.infoseek.co.jp/sub1.htm

ちなみに6番目の回答にも触れておきましょう。

①先ず労働基準法に抵触するのは、月1回の賃金支払を履行しない部分だけです。
②賃金については、どちらかというと民法第415条の債務不履行による損害賠償請求で解決すべき事項のようです。
http://www.hatena.ne.jp/1130858345#a6

労働基準法第24条第2項に上がっています。

(賃金の支払)
第二十四条
2  賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html#1000000000003000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

前掲と同じく労働基準法第120条第1項に含まれています(刑事罰)。

第百二十条  次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一  第二十三条から第二十七条まで(該当箇所の抜粋のみ)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html#1000000000013000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

賃金不払の件も労働基準監督署に申告するか、下記のフリーダイヤルを利用して指導を要請できます。

>(3 )無料相談ダイヤル(フリーダイヤル)の設置
> フリーダイヤルを設置し、都道府県労働局の担当官が適正な労働時間の管理と賃金不払残業の解消のための相談に応じる。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/10/h1024-1.html
参考サイト(民事)
http://www.mori-office.net/new_page_11.htm
http://g-shosi.com/naiyou/017.html

回り道をしたようです。前段に対する後段を眺めてみましょう。

→労働も契約ですから、一種の委託契約とみなされます。よってご質問の内容は、受託者が委託者の委託内容に忠実に従ったわけですから、民法第644条に規定する受任者の善良なる管理者としての注意義務は履行したわけです。よって、当該契約業務の履行により発生したミスは、当然に委託者に帰属するものですから、当該修正部分に対する労働時間に対する賃金の不払いは違法です。
http://www.hatena.ne.jp/1130858345#a7

何度も繰り返していますが、本事例は雇用(労働)契約ですから労働法が適用される問題です。6番目・7番目の回答も労働基準法の条文を引用して説明しています。労基法違反に対してどのような方法があるのかが問題なのです。ところが、7番目の回答では今度は一転して「一種の委託契約とみなされます」と論点をずらしているのです。

雇用契約業務委託契約は違います。重複しますので、下記のリンク先を参照してください。
http://www.hatena.ne.jp/iwashi?mode=detail&iid=53266

一番大きな問題点は、雇用契約では労働法が適用され、業務委託契約は労働者ではないので適用されないことです。

労働基準法を説明→雇用(労働)契約が前提→パートで働いている方は労働者
このような内容を含んで説明が進んでいながら、「一種の委託契約とみなされます」というのは、業務委託契約雇用契約では無い→従って労働基準法の適用を受けないと説明し始めたことになります。私がやれやれと嘆息まじりの題名を付けたのも、この点にあります。労基法を説明したのは何の為なのか? 労働者保護の目的を有する労働法を援用しながら一方で労働者性を有しない契約であるとする全く矛盾した説明が混在しているのです。